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情報量の多い動画の弱点

2024/04/22

何でもかんでも動画にすればいいものではない

企業の動画活用が注目され始めたとき、動画制作企業のセールストークの1つに「挿画は文字よりも多くの情報を視聴者にとどけることができる」というものがありもす。

他にも「動画は実際の動きで視聴者を注目させられる」「音楽や言葉でも情報を伝えられるので、伝えられる情報量が多い」「受け手に与える印象が強い」「広告認知や内容の記憶が大幅にアップする」といったものもあります。また多くの動画制作会社のホームページには、「1分間のビデオには180万語の価値がある」という記事が多く乗っています。

これは、マーケットリサーチ会社が元ネタです。動画の売り文句もこの調査ももっともらしく聞こえますよね。数値換算すれば間違っていないのかもしれませんが、盲目的に信じるのは、みなさんの制作する動画を失敗に導くことになるでしょう。

その根拠になりえるのは、2人の心理学者が行った「見えないゴリラ」という実験があります。被験者の学生にバスケットボールの試合のビデオを見せて、パスの回数を数えてもらうという実験です。試合の途中でゴリラの着ぐるみが現れ、カメラに向かって胸をたたくハプニングが予告なく差し込まれたりします。実験の結果、学生たちはパスを数えることに気を取られ、乱入したゴリラに気づいた人は、半数しかいなかったようです。

この実験は、私たちは「目の前にあるすべての情報を認識できるわけではない」ことを教えられました。広告コピー、バナー広告の画像とテキストといった情報の表現形式はさまざまな媒体の制約を受けています。最も大きな制約は面積。新聞の三行広告、バナー広告も限られた面積で伝えたいことを実現しなければいけません。しかし、動画は時間が許せばいくらでも情報を詰め込めますよね。アメリカの国立訓練研究所の調査によれば、視聴覚の記憶定着率は20%で、読むことの10%の2倍とされている。映像やテキストだけでなく音も入れられるので、やれること、手段が豊富にあるのです。

動画はテキストや画像とは比べ物にならないほどの情報量を載せることができますが、凝った映像や効果音などの編集効果に視聴者の注意がそがれ、肝心の伝えたいことが視聴者に伝わっていなければ、元もこも無くなってしまいますよね。なんでもかんでも動画化すればいいわけではありません。それはコストの制約上、難しいことは説明しましたよね。本当に伝えたい情報を、視聴者に注目できるように制作しよう。そのためには、動画化したい対象のうち、動画でなければ伝わりにくい情報が何かを考え、伝えるべき情報を絞り込むことが必要になります。それを考える基準となるのが「動画化価値」なのです。


動画化価値とは

動画化価値とは、テキストや静止画では表現しきれないもの、つまり動画でしか伝わらない、動画にしなければ伝わりにくい情報のこと。動画化価値は、それが視聴者にとって知りたい事や解釈したいことに直結していれば、高い制作・編集コストをかけなくても尺の長短を問わず、多くの人に視聴されたりシェアされたり、購入などの行動につながります。

動画化価値には大きく2つの要素がある。形状や動きに関わる要素と人に関わる要素。形状や動きに関わる要素には、温かいごはんから立ちのぼる湯気、ハンバーグを切ったときにジュワ~っとあふれ出る肉汁、ぐつぐつと茹だったお鍋、透明なグラスに飲み物が注がれたときのカランカランという氷の音と動き、など形状や動きの要素はたくさんあります。

また、マッサージ器がグイングイン動く様子や、工具が高回転しながら軸がぶれない様子、布団やクッションの弾力性、機能性衣類の繊維の伸び縮みの様子、ジュエリーのキラキラなどの実際のものもあれば、ITシステムやWebサービスであればサクサク滑らかに動くユーザーインターフェイスなどがあります。

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